ロシア経済ニュース

ロシア経済に投資する中年の備忘録(ロシア語→日本語翻訳日記)

March 2013

キプロスに預金を置くロシア

キプロスが預金への課徴金を課すことになった件について、決定前の記事ですがロシアの企業がどのくらいキプロスにお金を置いていたかFinmarketがMoody'sの評価を掲載しています。
(本当はこっちを先に掲載する予定だったのですが・・・)

銀行預金部分の訳を抜粋しておきましたが、 ロシアの銀行はキプロスの銀行に120億ドルを預金としておいていて、またロシアの企業はキプロスに190億ドルを置いているとのこと。この10%だとすると31億ドル・・・個別企業にとってはつらいとこも出てきそうですが、全体としてはそこまで大きな影響はないかもしれません。

銀行の中でキプロス資産が最も大きいのはVTB。ということもあって、昨日のロシア株式市場ではVTBが-5.4%と大きく下げています。ただ、市場で最大のガスプロムが-0.15%と値を変えていないので、全体としてはそこまで下げていません。むしろ日本の方が下げているという・・・どこまで打たれ弱いんでしょうか。

ただ、直接的な預金保有はこのくらいなのですが、間接的なものも含めるとキプロスの銀行の総資産の25%はロシア由来で、このうち1/3が逃避するという説もあります。逃避先はオランダとロシア。キプロス大丈夫か。

この施策には、プーチンさんも、ロシア人の資産がやられるということで強く批判。 微妙な照明を使って恐怖感を増幅させています。狙い撃ちみたいなもんだもんなあ。ロシアは参加していないユーロ機関での決定ですし。

 続きを読む

キプロスが預金への課徴金を決定、ロシア人大損

日曜日は通常更新しないのですが、キプロスの預金への課徴金が決定されたというニュースが飛び込んできたので、RIA NOVOSTIの記事を訳しました。(荒い訳なので注意) 

16日、キプロスはEUの指導に従う形で預金に対して課徴金を課す決定を下しています(日経記事参照)。これについて大統領がコメントしています。EUの金融支援は5カ国目ですが、このような預金者への課徴金は初めて。10万ユーロ以下は6.75%、10万ユーロ超は9.9%の税が課せられます。

キプロス国民はもちろん損害を被るわけですが、キプロス預金といえばロシア人。ロシアの会社はキプロスに持ち株会社とかよくわからない会社を作ってそこに利益を溜め込んでいたりしていますので、こういったロシア人たちが大打撃を受けることになります。むしろ大半がロシアマネーのような気も。すでに電子送金は凍結されているので、逃避もできません。ルーブル為替にも影響が出てきそうです。

このことを織り込んだ上でEUとキプロスはこの決定を採ったのでしょうね。
しかし、これでロシア人が金を引き上げたらキプロスもっとやばくなるのでは・・・?


続きを読む

ロシア人「またルーブルやばそうだからドル買っとく」

独立新聞が、ロシア人の外貨購入額が増加して危機時の水準に近づきつつあると報じています。

2010年に比べて2012年の個人による外貨購入額が60%増加して620億に達しているとのこと。リーマン・ショック危機がロシアに波及した2008年は793億ドルとのことで、それに比べればまだ少ないのですがそれにしても増えすぎだと。

外貨需要が高まっているのは、
・欧州経済・米国経済の先行き不安がロシアに波及するのではないかとの不安
・不動産を含む外国商品購入が増えている
・ハイパーインフレのあった1990年代からの惰性
・労働移民による送金

などが考えられています。最近の傾向として顕著なのは最初の要素かと。
ま、ここ数十年ハイパーインフレもなくとどまることなく円高が続いていた日本でも外貨預金を持つ人が増えているかと思う(私もですが)ので、 ハイパーインフレもデノミもやったロシアの人が外貨を選択するのは当然。ただ、2008年より前はルーブルも強くなってきていて信頼感が増していましたし、ルーブル預金の利率はかなり良いです(債券より良い)。

ただ、記事でも指摘されていますが、個人の売り越しが顕著だとは言え為替自体は安定しているので、そんな心配はない・・・と言いたいところですが、キプロスがやばくなって来ましたね。キプロスにはロシアの金がじゃぶじゃぶと流れ込んでいるので、キプロスがやばくなるとロシアもやばくなるような。この件については来週記事にしようと思っています。

SBIのルーブル建て社債、まだ売り切れてないということはあんまり売れてないんでしょうかね。

 続きを読む

投資家ビザ導入へ着手←権限争い?

Finmarketが投資家ビザ導入について報道しています。

といってもこの記事ではどうもわからない点が多い。他の記事も検索してみたけど細かい言葉遣いが変わってるだけでほとんど同じ内容。なんなんだ。

5年までのビジネスビザは一定の人は取得可能という中で、経済産業省が斡旋を行う権限を持つことにするだけなのか、 新しい投資家ビザを導入するのかもわからんのです。記事では前者のような書き方でしたが、その場合は「単にまた仲介業者が増えたか」っていう印象ですね。まあ、ビジネス寄りなので少しは緩和されるのかもしれませんが。

この記事を読み始めたときは後者のイメージでした。マレーシアとかシンガポールとかにある、一定の資産を持って株なり債券なりに一定額を投資している人にビザを出すという・・・でも寒いし移住したい人なんてあまりいないだろうしなあ<偏見?


続きを読む

ロシア企業が安いのには理由がある:(4)株価の石油価格への従属(終)

Finmarketが伝えるCitiの分析記事もこれで終わりです。

最後に、ロシア株式市場評価で最も大きいと見られる石油価格への依存について述べられています。MSCI Russiaインデクス※は石油価格に従属しており、相関係数は89%とほとんど同じような動きをしているとのこと。

※正確にはMSCIインデクスに採用されている企業の利益率との相関関係

これまで当ブログでは何度も述べていますし、だいたいの方のコンセンサスになっていると思いますが、実際に数的分析をしてもやはり、やはり石油価格とロシア経済が相関というか従属しているという結果がわかって、嬉しいやら悲しいやら・・・実は違うんだよ!という分析も待っていたのですがそういうわけにはやはりいかないんですね。

まあ、石油価格が十分に低くなると相関関係が失われるらしいですが、引用元の記事に掲載されているグラフをみると、石油価格以上に企業利益率が下がるという最悪のパターン。コモディティよりボラティリティの高い経済、というわけでこのボラティリティが株価に織り込み済みなので安い、と。

だったらこれから石油依存から脱却すれば上がっていくんじゃないか、とも思いますが、そんな簡単に脱却できないだろうとも思ってしまうわけです。

なかなか明るい未来は描けないものです。でも日本よりは明るいと思っていますがね。


ロシア企業が安いのには理由がある:(1)石油依存によるボラティリティ
続きを読む

プーチン大統領顧問が中銀総裁へ

プーチン大統領がエルヴィラ・ナビウリナ(El'vira Nabiullina)大統領顧問を新たな中銀総裁へと推薦したとFinmarketが伝えています。

2007年から2012年まで経済発展大臣を務め、その後大統領顧問をしていました。ちょっと前に紹介したプーチさんのキ◯ガイ発言の記事でちょっと出ていましたね。経済発展大臣のときにWTO加盟を果たし、仕事の腕前の評価は悪くないようです。

他の候補として挙げられているクドリン元財務大臣やコスチンVTB総裁は、RIA NOVOSTIによるとナビウリナ氏は中銀総裁にふさわしいと発言しているようなのでほぼ決まりなのでしょう。クドリンさんに至ってはすぐにTwitterで「素晴らしい候補。彼女に成功を!」とつぶやいてましたし。女性の中銀総裁は、G20では3カ国目になるようです(南ア、アルゼンチンに次ぐ)

今後の中銀の金融政策がどうなっていくのかが気になるところですが、上の記事によると、金融緩和、現状維持、保守転向と右から左までいろんな予想がされていてまったく不明w

ウファ出身、モスクワ大学経済学部卒、基本的に経済発展省でキャリアを積んできた彼女。日本で言えば東大卒経済産業省キャリアが大臣に抜擢→中銀総裁という道筋なので、産業寄りの金融政策に傾く可能性があるのかなあとも何の根拠もなく思ったり。となると金融緩和→ルーブル下落ということになりますが、日本と違って通貨下落で痛い目をみているロシアなのでそこまで短絡的ではないんでしょうね。


続きを読む

ロシア企業が安いのには理由がある:(3)設備保守に費用がかかる分野

昨日は酒のんでそのまま寝てしまって更新できず・・・なんという屈辱ッ。
というわけで本日は2つ更新です。

引き続きFinmarketが掲載しているCitiの記事について。

ロシア企業の価値が低く見える件を、その特徴が顕著である4分野(石油、ガス、インフラ、金属)について分析しています。要は、「ソ連時代の設備保守にばかり金が使われて新規設備にはあまり投資されていない」ことが、企業の利潤を大きく見せているということです。

ノリリスク・ニッケルなんて新規投資ゼロみたいです。本当?

前提がちょっと大げさなところもありますが、上記の条件を考慮に入れてPERを修正すると6.2倍から10.3倍に上がり、割安感が薄れると。それでもそんなに高くないように見えますが・・・(日本企業と比べてしまうからか)。

もう1つだけ記事が続きます。

ロシア企業が安いのには理由がある:(1)石油依存によるボラティリティ続きを読む

ロシア関連翻訳ブログ様にリンク

このブログもやっと3ヶ月目を迎え、ブログ継続の最初の壁は超えたかと思います。

よく見るロシアニュース関連サイトのリンクは早い段階で張らせてもらって、右のコラムに入れているのですが、ロシア関連でお世話になっている日本語ブログについては、なんとなく畏れ多く、RSSリーダで巡回しながらも当ページではリンクを貼っていませんでした。

が、まあ一応ブログの体をなしてきたと思いますので、自分の巡回用と紹介用ということで勝手にリンクをはらせていただきました。 ロシア経済関連の大御所からロシア語翻訳ブログまで、個人的に楽しませているところです。

勝手にリンクされて不快と感じられる場合は教えて下さい。すぐリンク削除します。
(一応「無断リンク禁止」等の表示がないかはできる範囲で確認しました)

なお、当サイトはリンクフリーです。むしろありがたいです。


 <今回リンクさせていただいたサイト>

他にもロシア関連ではロシア在住の方のブログをよく拝見しておりますが、今回は翻訳ブログ中心にリンクさせていただきました。

服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版)(服部倫卓さん)
ままくんカフェ(まめバイオリンさん)
おそロシ庵(Goncharovさん)
ロシアぶろぐ(仮)~目指せ1日1ロシアネタ~(まちるださん)

 

ロシア企業が安いのには理由がある:(2)ソ連資産の減価償却

昨日のFinmarketの記事の続き。

ロシア企業が「お買い得」に見える理由として、昨日はボラティリティが織り込まれていることを挙げましたが、今日分の記事では、ソ連時代の生産設備が未だに使われていて会計上利益が増えて見えることが指摘されています。

古い生産設備を使っても儲けられてるから良いのではないかとも一瞬思うのですが、特にエネルギー分野では設備更新が進められていて、その費用がまだ認識されていないため一時的に利益が多く見えています。コストで言うと10倍近く増える計算になるようです(会計上)。

逆に、ソ連時代の設備を使っていない分野、特にリテールなんかはそういった会計上のマジックがないため、他の産業分野に比べ利益が小さく見える、というか通常の利益しか出せていません。

数年後に費用が後追いできて利益率は下がる、となると、エネルギー依存の高いロシア株式市場への投資は手控えるべき?と思いがちですがこの記事は「そういうことはすべて織り込み済みなので企業価値が低い」という説明なので、現在の投資判断上は過大に見なくても良いのではないでしょうか。

ロシア企業が安いのには理由がある:(1)石油依存によるボラティリティ
ロシア企業が安いのには理由がある:(2)ソ連資産の減価償却 ←この記事
ロシア企業が安いのには理由がある:(3)設備保守に費用がかかる分野
ロシア企業が安いのには理由がある:(4)株価の石油価格への従属(終)

続きを読む

ロシア企業が安いのには理由がある:(1)石油依存によるボラティリティ

Finmarketが、CitiBankによるロシア株式市場の分析について報じています。

PERで見ると、ロシア株は他のBRICs諸国に比べても安すぎるとよく言われているようです。MSCI RussiaインデクスのPERは6.2倍と、それだけ見るとあらお買い得ね、という風に見えます。しかし、この記事には、それには以下の理由があるとしています。

・ロシア株式市場のボラティリティが大きい
・株式市場が石油価格に依存しすぎ
・特にエネルギー関連企業で(減価償却の関係で)PERが良く見えている

1と2は関連しています。前にもちらっと書きましたが、ロシア市場に投資することは石油・ガスといったコモディティに投資することに近いです。この記事でも書かれており、元記事にはグラフもついていますが、ロシア市場のインデックスであるMSCI Russiaに含まれている中でエネルギー分野の割合が他の新興国と比べて5倍、50%を超えています(!)。エネルギー分野以外の産業もおそらくエネルギー分野との連関性が強いと思いますので、ロシア投資≒エネルギー関連コモディティ投資、と考えざるを得ません。コモディティ価格のボラティリティが大きい→ロシア株式市場もボラティリティが大きい、という至極単純な構図。

というわけで、PERだけで見るとお買い得に見えるロシア株式市場ですが、こういったリスクがすでに織り込まれているから安いだけだ、という結論です。

ロシア投資ブログを謳っておきながらポジティブになかなかなれない記事ばかりが続いてしまってます。積み増しはやめておこう・・・かな・・・。

次回は減価償却についてもう少し詳しく紹介します。

ロシア企業が安いのには理由がある:(1)石油依存によるボラティリティ ←この記事
続きを読む
プロフィール
ロシア経済の成長を信じロシア経済に投資する中年の投資と勉強の備忘録です。 ロシア語の勉強も兼ねて、ロシアや旧ソ連諸国の経済関連ニュースを紹介していきます。勉強中なので、いろいろ教えて下さい。 HN:イワノフ ブログランキングに参加しています。面白かったらどちらか押してください~↓
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へにほんブログ村 経済ブログ ヨーロッパ経済へ
ブログランキングならblogram
ブログ内検索
人気記事(過去30日間)


最新コメント
プロフィール

イワノフ

メッセージ

名前
メール
本文
スポンサードリンク
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

月間ページビュー数
2012/01: 01710
2012/02: 02962
2013/03: 06794
  • ライブドアブログ